CHECKMATE

初めてフィルム越しにキスした時でさえ、キス顔が可愛いと思っていたが。
フィルム無しでしたキスは言葉にならないくらい可愛くて。

普段はクールで表情が乏しい彼女なのに。
いざキスすると、蕩けたような甘える顔をする。

甘えられない?
そんなの、この顔出来たら上出来だろ。

こんな顔されたら、もっとキスしたくなるだろうが。

「んっ……ッ……」

キスの手応えから、経験値は少ないだろうと判断できる。
けど、お酒のせいなのか。
それとも、毎日悶々とセーブしてたからなのか。
手加減してやれそうにない。

啄みながら後ろ首を支えようと指先を髪に触れた瞬間、シャンプーのいい香りが鼻腔を掠めた。
甘噛みして舌を滑り込ませ、腰を抱き寄せた、瞬間。
ボディーソープなのか、パジャマからの柔軟剤なのか。
はたまた香水なのか分からないが、仄かに甘い香りもして。

男顔負けの度胸と仕事ぶりからは想像出来ないほど、女性なのだと実感する。

絡め取る舌先は、まだ俺を追い求めて来ない。
それがまた堪らなくて。
いつか、彼女から追い求めてくる日が楽しみになる。

何度も何度も角度を変えて。
体に力が入らなくなるまでキスで攻めて。

小刻みに見悶えしていた体が少しずつ力を失い、脱力していくのを感じて、唇を首筋に這わせる。
ブラウスのボタンをいとも簡単に外すと、意識が戻ったのか、体がビクッと跳ねた。

羞恥心と恐怖心を取り除くために、再びキスの雨を降らして―――


ここ数年仕事が忙しくて女遊びを避けて来たけど。
まだテクニックは劣ってないらしい。
キスで落ちた彼女は恍惚な表情で俺を見つめている。

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