CHECKMATE

潤んだ瞳。
上下する濡れた長い睫毛。

僅かに汗ばんだ額。
乱れた髪。

浅く呼吸する唇。
漏れ出す艶めいた声。

視線を奪う形のいい胸。
色気のある鎖骨。

上腕を掴む指先。
触れ合う肌の温度。

逃れようとする腰。
拒もうとする膝。

それら全ての反応が堪らなくて
容赦なく隅々まで俺を刻んでゆく―――

***

「生きてるか?」
「……っん…」

やり過ぎた。
完全に。

ピクピクと体を震わす彼女を優しく抱き締める。
乱れた髪を指先で梳き、ハッと我に返る。

アフターフォローする俺だったか?
いつもは煙草を吸いにベッドから抜け出てた記憶しかない。

俺好みの女なら多少腕枕した記憶はあるが。
こんな風に優しく接した記憶がない。

思わず彼女から離れようと腕を緩めたその時。

「か、……ずきっ」
「ッ?!……ん?」

瞼を押し上げた彼女と視線が絡まった。

その瞳はキラキラと輝いていて。
吸い込まれてしまう。

「ここに………住んでもいい?」
「あ、………ん」
「嫌なら、……隣の部屋でもいいから」

揺れる瞳が俺の心を射抜く。
まるで、俺がチェックメイトされたようで。

「嫌なら抱いてない」
「っ……」

大きな瞳を更に大きくして。
俺の言葉が嬉しかったのか、狼狽えるのが可愛くて。

「そんな表情(かお)されたらエンドレスで抱きたくなるから、セーブする術を身に着けろ」
「っっっ……」

たじろぐ彼女のおでこに唇を当てる。
これが初めてじゃなかったら絶対手を出してる。
もれなく。
容赦なく。
それも、執拗に。

「今夜は我慢してやる」
「っっっっっ~~~ッ」
「次は容赦なく啼かせるから覚悟しろ」
「ッ?!!!!」

この俺から逃げられると思うなよ?
俺は絶対、狙った獲物は逃がさない――

~FIN~

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