CHECKMATE
彼女は手袋を嵌め、横たわる女性の瞳孔を確認し、下顎を掴んだ。
「これはかなりヤバいわね」
「おい、どうかしたのか?」
思わず、声が出てしまった千葉。
心肺蘇生法を習ってはいるが、実際、目の前で倒れている彼女の状態がどうなのか解らない。
頭部を強打しているかもしれないし、持病があるかもしれない。
下手に身体を動かして、命の危険に晒す事だって考えられる。
千葉は真剣な表情で顔を覗き込むと、
「あなた、あそこのカフェから大至急で砂糖を貰って来て!」
「は?……砂糖って?」
「砂糖は砂糖!!塩じゃ無く、砂糖!!出来ればグラニュー糖じゃなく、水あめみたいな………って、あっ、そうだッ!!」
「ん?」
『カフェから砂糖を持って来い』と言ったかと思えば、突然発狂して、何やら辺りをキョロキョロし始めた。
「あっ、あった!!ちょっと、そこにある私の鞄からさっきの袋を出して!!」
「は?……袋って?」
「袋は袋よ!さっき、あなたが手にしたファスナー付のやつよ!いいから、早くッ!!」
怒鳴り急かすような口調に思わず怯みがちになりながらも、千葉は彼女の鞄から先ほどの白い粉の入った袋を取り出した。
「貸して!!」