CHECKMATE


あっという間に野次馬は消え、再び人の流れが出来始めた交差点脇。
千葉の上着を手渡す彼女に深々と頭を下げた。

「大勢の前で恥を掻かせて申し訳ない」

千葉は実直な男である。
自分の過ちは素直に認め、謝る事も決して忘れない。

「恥を掻いたのは私ではなく、あなたでしょ?」
「…………そうだな」
「もう、今日は本当に散々な1日だわ」
「…………すまない」
「占いの館に行きたかったのに……」
「えっ?………占い?」
「何?……馬鹿にしてんの?」
「いや、違うんだが……」

千葉が潜入したビルの1階に占いの店が営業していた。
恐らく、彼女はそこへ行こうとしていたのであろう。

千葉のとんだ勘違いから、状況はどんどん悪化したのである。

「俺の勘も鈍ったか?」
「何か言った?」
「いや、何でもない」
「じゃあ、今度こそ本当に、さ・よ・う・な・ら!」

嫌味とも取れる彼女の口調だったが、千葉に言い返す気力は無かった。

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