CHECKMATE
「例の組織が、まだ夏桜の事を諦めてないみたい」
「………へ?」
「昨日夜遅くに所長に呼ばれて、新たな任務を賜った」
「?!」
河村真希は科警研 法科学第一部(生物学分野)で5年の経験を積んだ後、法科学第三部(中毒学&化学分野)に配属となった経歴の持ち主で、歴代の科警研の研究員の中でもトップクラスの才女である。
彼女の才能と人望を熟慮して、水面下で極秘任務が言い渡されていたのである。
それは遡る事、2年前。
当時、法科学第一部から第三部へ移動したばかりの真希に、科警研のみならず警察庁からの指示で、極秘で1人の研究員を保護するという目的の任務が言い渡されていたのである。
そう、その人物こそが『東 夏桜』、彼女である。
それは極秘任務という事もあり、夏桜の情報を知る者はごく僅か、ほんの一握りの人間のみ。
真希はその一握りの中に選ばれた逸材である。
「ちょっと夏桜!大丈夫?………顔色悪いよ」
「…………大丈夫じゃ……ないです」
真希の言葉はあまりにも衝撃的で、夏桜は計り知れぬ不安と恐怖に襲われ、膝から崩れ落ちた。
そんな夏桜を支える真希もまた、得体の知れぬ不安と恐怖に襲われていたのである。