CHECKMATE


朝礼の時間となり、重い足取りで備品室を後にした2人。
重々しい空気を纏っていた。

いつもと何ら変わらない朝礼が終わり、2人はそれぞれ自分の持ち場に着いた。

真希は急ぎの検査依頼に取り掛かり、夏桜は毒劇物による中毒事件の調査依頼書に目を通していると。

―――――トゥルルル、トゥルルルッ

「はい、化学第二、東です」
「………東君、私の部屋へ」
「………………はい。………直ぐに伺います」

夏桜のデスク上にある電話が内線を告げた。
素早く受話器を取ると、重低音の声が受話口から夏桜の耳に届いた。

声の主は科学警察研究所の所長である。

普通の研究員であれば、所長室に呼ばれる事自体喜ばしい事であるが、夏桜に至っては真逆で、出来る事なら行き会いたくない人物No.1である。

机の上をサッと片付け、読みかけの依頼書をケースに戻し、夏桜は重い腰を上げ所長室へ向かった。

「失礼致します」

覇気の無い声が所長室に響く。
何度来ても『いいものでは無い』と思ってしまう夏桜。

窓際で外を眺めている男のもとに歩み寄る。

< 37 / 305 >

この作品をシェア

pagetop