CHECKMATE
「もしかして、その状況から逃れる為に?」
「………えぇ」
千葉の問いに溜息まじりに答える夏桜。
千葉は副総監から聞かされた事を思い出した。
『身体のどこかが悪いらしい』
それは彼女の言う、劇薬を煽った事に相違ないと直感で思った。
「身体は……大丈夫なのか?」
「………今のところはね」
「そうか。……何かあれば、いつでも言ってくれ」
「………ありがとう」
世界的にマークされているであろう『東 夏桜』という人物。
見た目はどこにでもいるような清楚な女性だが、その瞳は何処か影のあるように思えた千葉。
彼女が背負っている人生は、想像を絶するものなのかもしれない。
常に危険と隣り合わせで、刑事である自分よりももっと危険な世界で生きている。
千葉はそんな風に感じていた。
「じゃあ、俺はそろそろ。明日は7時半過ぎに迎えに来るから」
「………はい」
「じゃあ、ゆっくり休んで」
千葉はソファから立ち上がり、玄関へと歩み始めると……。