CHECKMATE


千葉の車で庁舎に向う車内で。

「あの……」
「……はい」
「一昨日の事なんだけど……」
「………」

信号待ちで停車中の車内で、お互いに距離を取ろうとする2人。
声のトーンも低めで、そこには感情の起伏が見受けられない。

緊迫した感じでも無いが、和やかな雰囲気とは言い辛いそんな空気に包まれていた。
その何とも言えない空気を打ち破ったのが千葉である。

「交差点で倒れたあの女性、あの時、彼女はどんな状態だったんだ?」
「あっ、彼女ね?」
「あぁ」

千葉はあれから気になって仕方なかった。
あの後、すぐさま救急車で搬送された女性の容体を確認したら、救命処置が的確だった為、命に別状は無いとの事だった。

医師免許を取得していると知ったのは翌日の事。
千葉は夏桜の処置姿を思い返し、真横にいる本人に聞きたくて仕方なかった。

人命救助の方法を知りたい訳ではない。
『東 夏桜』という人物が取った行動から、彼女の人柄を読み取ろうという刑事の性である。

信号が青に変わり、車が走り出すと。

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