CHECKMATE


「彼女は顔面蒼白で冷汗を掻いていた。それに頻脈で振戦が見られたし、既に下顎に強張りが現れていた」
「………それって、どういう症状の人なんだ?」
「低血糖」
「低血糖?」
「えぇ。私が彼女の口腔内を確認したの見てた?」
「あぁ」
「彼女、下の第二小臼歯のインプラント施術を数日前にしてたみたいで、歯肉部分がかなり炎症を起こしていたわ」
「……」
「施術後間もないとよくある事だけど、炎症の痛みで食事が摂れず、低血糖になり易いの」
「………なるほどな」
「経口摂取が可能ならば、清涼飲料水みたいな物を摂取すれば大丈夫なんだけど、彼女の場合は既にその状態を超えていた」
「だから、………あぁいう方法を取ったって訳か。
「そう。経口摂取が不可能な時は、口唇や歯肉の間に糖を擦り込ませるのが最善の方法よ」

夏桜が解り易く説明してくれた為、医療処置が解らない千葉であってもすんなりと理解出来た。

あの状況下で的確な判断を下した夏桜。
そんな彼女が医師としては勿論の事、人として尊敬に値すると千葉は思った。

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