CHECKMATE


「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか?」

おしぼりと冷水をテーブルに置き、会釈するウェイター。
勿論、倉賀野である。

「いや、会計を頼む」
「畏まりました」

伝票を手にした倉賀野は、今一度会釈し席を後にする。
そして、水島はエスコートするように美穂の手を取って立たせた。

「行こうか」
「………えぇ」

性急過ぎるような展開だが、それが作戦である。
如何にも“待ち切れない”と思わせる千葉の指示であった。

水島の腕に腕を絡ませる美穂。
その表情は勝ち誇ったような悪女の微笑ではなく、驚き焦るような表情でも無い。

どこか儚げで、そして、水島に対して申し訳なさそうな、そんな複雑な表情であった。


―――カチャッ
ドンッ――――

「っ……」

< 99 / 305 >

この作品をシェア

pagetop