泣きたい夜には…~Shingo~



「ダメよ!まだ安静にしてなきゃ!まだ点滴だって終わってないんだから!!!!」


彼女は厳しい口調で言うと、俺をベッドに押し込み、額に手を当てた。


ドクンッ!


胸の鼓動が痛いくらいに大きく拍動を繰り返す。


健康診断では、心電図に異常はなかったはずなのに。

どうなっているんだよ?


連鎖反応なのか、顔だけでなく、全身まで熱くなっていく。


「熱いっ!まだ下がってないじゃない。朝まで絶対安静よ、わかった?」


厳しい口調の彼女だったけれど、額の上にある体温低めの手は熱のある俺にはとても心地良かった。


「冷却シート貼った方が楽になるわよ。保冷枕じゃすぐに温まっちゃうもの」


え……


坐薬の次は冷却シートってか?


ガキじゃあるまいし、勘弁してくれよ。


そんなことを思っていた俺に彼女は眉間にしわを寄せて、


「ねぇ、今、子供みたいって思ったでしょ?見るのは私だけなんだし、我慢しなさいよ」


咎めるように言うと、救急箱から冷却シートを取り出し、「坐薬入れてもらうよりはマシでしょ?」と有無を言わせず俺の額にペタッと貼りつけた。


まさか、俺の心が読めるのか…?


でも、冷たくて気持ちいぃ…


心地良さに浸りながらいつの間にか眠ってしまった。



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