泣きたい夜には…~Shingo~
先生は何もかもわかっていたんだ。
だからこそ、わざと傷つけるような言い方をして別れたのだろう。
「ひとみには奥さんのことを愛していないと言ったけど、本当は…」
先生の本心を知りたいと思った。
「キミはなかなか突っ込むね」
向井先生は顔を赤らめ、
「始めはひとみのことが忘れられなかった。
ひとみと別れて香澄と結婚したことを後悔したこともあった。でも、香澄はすべてお見通しだったんだ。
彼女に言われたよ。
『あなたが他の誰かを愛していても、私はそれに負けないくらいあなたの全てを愛しています』って。
完敗だったよ。香澄の懐の深さにやられた…そう思った時には俺も香澄を愛していた。ひとみとは次元の違う愛でな。
だから誤解するなよ!
それに、今のひとみは俺じゃなくて、キミに夢中なのはアメリカ留学断るくらいだから明白じゃないか!」
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