泣きたい夜には…~Shingo~



先生は何もかもわかっていたんだ。


だからこそ、わざと傷つけるような言い方をして別れたのだろう。


「ひとみには奥さんのことを愛していないと言ったけど、本当は…」


先生の本心を知りたいと思った。


「キミはなかなか突っ込むね」


向井先生は顔を赤らめ、


「始めはひとみのことが忘れられなかった。

ひとみと別れて香澄と結婚したことを後悔したこともあった。でも、香澄はすべてお見通しだったんだ。

彼女に言われたよ。

『あなたが他の誰かを愛していても、私はそれに負けないくらいあなたの全てを愛しています』って。

完敗だったよ。香澄の懐の深さにやられた…そう思った時には俺も香澄を愛していた。ひとみとは次元の違う愛でな。

だから誤解するなよ!

それに、今のひとみは俺じゃなくて、キミに夢中なのはアメリカ留学断るくらいだから明白じゃないか!」



.
< 107 / 156 >

この作品をシェア

pagetop