泣きたい夜には…~Shingo~
ようやく病院の建物が見えて来た。
駐車場に車を停め、病院を見上げた。
院長のところは一人娘だと聞いた。
彼女と結婚すればこの病院は俺のものになる。
いや、あの院長の娘だ。
一筋縄じゃいかないだろうし、俺のことを気に入るとは思えない。
違う!
そうじゃない!!!!
そんなことなんか、どうだっていいんだ。
俺にはもっと大切なものが、
手に入れたいものがある。
この話を断ったら10人中10人が、「もったいない!」とか「お前はアホか!」そう言うだろう。
それでもいい。
院長室へと足を進め、気持ちを落ち着かせるべくゆっくりと深呼吸をした。
コンコン!コンコン!
ドアをノックすると、
「どうぞ」
中から院長の声が聞こえた。
.