泣きたい夜には…~Shingo~



ドアを開け、


「失礼します」


声が上ずるも、いつもよりも深々と頭を下げ、中に入ろうとすると、


カッカッカッカッ…


背後からヒールの踵を鳴らす高い音が聞こえて来た。


しかも、ものすごい勢いでこちらに近づいて来る。


そんなことよりも、一刻も早く院長に返事をし、すっきりとした気持ちでひとみの所に行きたい。


「失礼します」


院長室に入ると、俺に続くようにヒールの音が院長室に響き、俺の後ろで止まった。


だが、そんなことを気にしている場合じゃない。


用件を済ませてさっさと帰ろう。


「院長…「お父さん!約束が違うじゃない!!!!いったいどういうことなの!!!?

帰国早々、結婚相手って!私には好きな人がいるんだからお父さんの思い通りにはならないわよ!!!!」


ヒールの主のものすごい剣幕に俺の声はかき消されてしまった。



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