泣きたい夜には…~Shingo~



行きの重かった足取りが嘘のように帰りは軽く、駐車場まで戻ると、


「うわぁ!懐かしい、慎吾の車~!あぁ、帰って来たって感じがする~!」


相変わらずのオーバーアクションで、ひとみはシートにスリスリしそうな勢いで車に乗り込んだ。


フッ…


変わってない。


「どこに行きたい?」


そう聞くと、ひとみはちょっと考える素振りを見せ、


「そうだなぁ、慎吾んち!」


あのな…。


まだ早いだろうが!


「そうじゃなくて…何が食べたい?」


ひとみはちょっと考えて、


「えっとね…焼き鳥!久しぶりに日本酒飲みたい!」


オッサンかよ、お前は…。


「了解!最高に美味い焼き鳥食わしてやるよ」


車を走らせて、ふと思い出した。


「ひとみの実家は桂川だったんだな…驚いたよ」


本当は驚いたなんてものではなかったが…。


ひとみのことだ、自分が大病院の跡取り娘だということを俺が知ったら引かれると思って黙っていたに違いない。



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