泣きたい夜には…~Shingo~



「でも、何でお前は浅倉なんだ?」


俺の疑問にひとみは笑って、


「浅倉は母方の姓よ。


ややこしいんだけど、父は実家の病院を継ぎながら、一人娘だった母と結婚して婿養子に入ったの。


だから、病院にいる時だけ「桂川」を名乗っているというわけ」


うーん…


わかったような、わからないような。


何ともややこしい事情だ。


「桂川のこと、慎吾には帰国したら話すつもりだったの。でも、私が桂川の娘だということを知っているのは、大学病院でも一部の人間だけ、向井だって知らないわ。浅倉姓のおかげでね」


ひとみはそう言うと、肩を竦めて笑った。


車の中で談笑しているうちに、ぎこちなさもなくなり、次第に打ち解けてきた。


店に到着し、車を駐車場に入れると、


「あ、ここのお店…知ってる!焼き鳥は美味しいし、日本酒も種類が豊富だし……ありがとう!慎吾、すごく嬉しい!!!!」


テンション高いのは時差のせいか?



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