泣きたい夜には…~Shingo~




「あっ、もうこんな時間?すっかり話し込んじゃったね」


ひとみは時計を見ながら驚きの声を上げた。


「出ようか?」


店を出るとひとみは、


「さぁ、これから慎吾んちにしゅっぱーつ!」


何故かハイテンションで…。


「いや、その前に行きたい所がある。付き合ってくれないか?」


ひとみは機嫌良く


「りょうか~い!」


ほろ酔い加減のひとみを乗せて車を走らせた。


これから何が起ころうと、今夜は俺にとって生涯忘れられない夜になるだろう。


助手席のひとみを見ると、長旅の疲れもあったのだろう、いつの間にか爆睡モードに突入していた。


そんな様子に苦笑しながら目的の場所に車を走らせた。


ふと空に目をやると、一筋の光がスーッと尾を引いて飛んでいくのが見えた。


「流れ星か」


消えないうちに3つ願いを唱えると、願いが叶うと聞いたことがある。


3つとは言わない。


ひとつでいい。


ただひとつ、願いが叶うようにそっと呟いた。


「ひとみ…」


助手席のひとみは夢の中で何を見ているのだろう。


無邪気な寝顔で…
< 144 / 156 >

この作品をシェア

pagetop