泣きたい夜には…~Shingo~
言った!
言ってしまった。
今になって緊張と恥ずかしさが怒涛のごとく押し寄せてくる。
もう、なるようになれ!
目を見開いたまま、茫然と立ち尽くしていたひとみ。
「それ…本当…?」
ようやく言葉を発し、信じられないといった表情で俺を見つめた。
「本当さ、ひとみが帰国したらプロポーズしようってずっと前から決めていた」
ジャケットのポケットから小さな箱を取り出すと、ひとみの手を取り、手のひらに乗せた。
今の俺にはこれが精一杯。
俺の何倍も給料を貰っているひとみには満足できるものではないかもしれないが、この瞬間に俺は人生の全てを賭ける。
「開けてみて」
声に緊張が移る。
ひとみは震える手で箱を開けた。
箱の中の小さなダイヤのついた指輪を見て、ひとみの目から大粒の涙が零れ落ちた。
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