泣きたい夜には…~Shingo~



そんなことよりも彼女は大丈夫だろうか?


後を追いかけたいところだが、教授と会う時間が迫っていたのでやむなく断念、仕事モードへと頭を切り替えた。


教授室に入り、坂田教授と打ち合わせをしていると、


コンコン!コンコン!


ノックの後、


「失礼します」


入ってきたのは白衣姿のひとりの男性。


あっ!!!!


さっき、アサクラさんに叩かれた男。


彼の左頬に生々しく残る赤い手形、それが何よりの証拠。


「向井先生、どうしたんだその顔は?」


驚いた様子で坂田教授が尋ねると、


「いやぁ、外来で興奮状態だった患者を落ち着かせようとしたのですが…思いっきりやられました」


向井医師は頬をさすりながら爽やかな笑顔を向けた。


フン!よ~く言うよ!女に殴られたくせしてよ。


思わず心の中で毒づいた。


教授は苦笑して、


「そんな顔じゃ、香澄が心配するなぁ…」


か、香澄…って!?



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