泣きたい夜には…~Shingo~



だが、これも仕事だ。


「おめでとうございます。向井先生のような方が娘婿でしたら教授も安心ですね」


とりあえず営業スマイルを作り、祝いの言葉と歯の浮くようなお世辞を言っておいた。


打ち合わせが終わり、会社に戻ろうとすると、


プルルルル…


スマホが鳴った。


「はい、成瀬です」


電話に出ると、上司から小児科の上杉教授の所に寄るように言われた。


小児科の上杉教授には新人の頃、社会人として、MRとしての心得を叩き込まれた。


今こうして仕事ができるのは教授のおかげだと言っても過言ではない。


少々緊張しながら小児科へと向かうと、


「成瀬くん、久しぶり。元気そうだね」


教授は穏やかな笑みを浮かべた。


「すっかりごぶさたをしまして…」


教授としばらく談笑していると、


コンコン!コンコン!


教授室のドアがノックされ、


「失礼します」


白衣姿の女性が入ってきた。



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