泣きたい夜には…~Shingo~



「この黄色い花綺麗だな。何て花だろう?」


フェンスに絡ませたつる状の花に触れようとすると、ひとみに強く腕を掴まれた。


「知ってる?それカロライナジャスミンっていうんだけど、花も葉っぱも根っこも全部猛毒だってこと」


え……


こんなに綺麗なのに…。


綺麗な花には毒がある、ってか?


「慎吾は薬学部卒だからわかるよね?有毒成分はゲルセミシン、ゲルセミン、センペルビリンだよ」


厳しい表情のひとみだったが、どこか俺を試しているようで。


確かにそれらは服用すると脈拍増加、呼吸麻痺、中枢神経刺激作用、血圧 降下、心機能障害の症状が出ると学生時代に習った。


でも、


「口に入ればの話だろ?でなければ一般家庭で栽培なんてできるわけがない」


バッサリ切り返し、花に触れてやった。


「あー、残念!引っかからなかった。つまんないのー!!!!」


ひとみは悔しそうに唇を尖らせる。



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