泣きたい夜には…~Shingo~



「ねぇ、まだなの?」


何故か隣にはひとみがいて…


「ちょっと待ってろ!もうすぐ着くから」


本当にややこしい奴だと思うが、こいつだけは放っておくことができない。


そんな気持ちにさせられる女はこいつが初めてだ。


「ほらっ、着いたぞ!」


車を駐車場に入れて、着いた所は…


「きゃー!前からここに来たかったんだー!」


芦ノ湖畔にあるホテル直営のデザートレストラン。


「私、アツアツリンゴパイとスフレにする!!!!」


メニューを見ながら、ひとみは目を輝かせて言った。


「おい!そんなに食べたら太るぞ!」


俺が窘めても、


「いいの!好きなんだから!」


無邪気に笑うひとみを見ていると、コイツが医者であることに奇跡を感じる。


何度も言うが、ドクターモードのひとみは凛としていて別人のよう。


上杉教授に言わせると、将来有望な小児科医らしいが…。


俺はひとみのそんなギャップに翻弄されていた。



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