泣きたい夜には…~Shingo~
そんなある日のこと、
いつものように大学病院内を回り終え、時計を見ると6時を回っていた。
今日のひとみのシフトは日勤。
何事もなければそろそろ上がる時間だ。
一旦会社に戻らないといけないからメールを入れておこう。
なんて、思っていると、
「あれ?成瀬さん?」
声のする方を見ると、
「たっ、高山さん。お疲れ様です」
高山さんは大学病院の近くにある、調剤薬局に勤務している。
職種は管理栄養士だが、自分の専門以外に医薬品管理や医療事務といった薬局業務にも明るく、陰の薬局長と言わしめるほどのエース的存在。
美人だがそれを鼻にかけることなどなく、穏やかな性格もあってか、狙っている男は大学病院だけでも数知れず…
でも、彼女を落とした男はまだいない。
過去には俺も憧れを抱いていたこともあったが、高嶺の花すぎて落とそうなどとは一度だってそんなこと思ったことはない。
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