泣きたい夜には…~Shingo~



「高山さん、私、異動の話は聞いてないですよ」


高山さんは険しい顔で、


「20日付で東京の本社に異動が決まったの」


すげ…


あそこの本社って言ったら、湘南医大の本院とも言われている光南医大病院の前にある薬局だろ?


レベルが違いすぎる。


「だったら栄転じゃないですか?おめでとうございます」


お祝いの言葉も、高山さんは否定するように大きく首を振って、


「めでたくなんかないわよ。左遷よ左遷!

あそこは処方箋枚数も多いし、ここなんかとは比べ物にならないくらいにハードなんだから。

あぁ、3年ぶりにこき使われると思うとゾッとするわ」


高山さんの嘆きに、本社は本当に大変な所なのだと推察することができる。


「でも、やりがいがあるじゃないですか」


高山さんは首を振ると、


「私が本当にやりたいことはこんなことじゃないの。

ずっとこの会社にいるつもりもないし、そろそろ潮時かな」


そう言うと、笑みを浮かべて空を見上げた。



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