泣きたい夜には…~Shingo~



ほぉー、すげー…


なんて感心してしまったが、俺には理解できなかった。


俺以上にふたりのことを知っているひとみが何故不機嫌になるのかを。


「あぁぁぁぁ!!!やっぱり私って嫌な女だわ。

ありさ先輩だってわかっているのに、慎吾に八つ当たりしてる…」


ひとみは頭を抱えてベランダに飛び出して行った。


いつの間にか外は春の雨が静かに降り始めていた。


「濡れるぞ。中に入れ、風邪ひくぞ!」


ひとみは首を振ると、


「頭冷やしたいから、ここにいる」


消えそうな声で言うと、手すりを掴んで空を見上げた。


寂しそうな横顔、孤独と悲しみを帯びた瞳…


でも…


「ダメだ!もっと自分を大事にしろ!!!!」


強引にひとみを抱き上げ(お姫様抱っこではなく俵抱きで)部屋の中に戻った。



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