泣きたい夜には…~Shingo~
「気がついた?」
声のする方を見ると、心配そうに顔を覗き込むインプレッサの彼女がいた。
「ここは…ッ!」
反射的に起き上がろうと試みたが、倦怠感と節々の痛みで体が言うことを聞いてくれない。
彼女に両手で制され再び体がマットレスに吸収される。
「起き上がらないで、今点滴しているから。ここは私の部屋よ」
穏やかな口調で初めて左手首に違和感を覚えた。
視線を移してみると、彼女の言葉どおり点滴が繋がれていた。
点滴スタンドには我が社の輸液。
あちこちの病院にさんざん売り込んだが、まさか自分がお世話になるとは。
正直、複雑な気持ちだが、この身をもって輸液の効果を知るいい機会かもしれない。
そう気持ちを切り替えた。
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