泣きたい夜には…~Shingo~
がっ!!!
♪~~♪
無情にも鳴り響くひとみのスマホ。
「病院からだ」
ひとみの表情が厳しいものに変わった。
空気読めよ!
そう言いたいのはやまやまだが、こればかりは仕方がない。
不謹慎だと思いつつもドクターモードのひとみは何度見てもかっこいい。
「はい、浅倉です」
緊張感たっぷりに電話に出たひとみだが、
「えぇーーーっ!!!?本当ですか?
行きます行きます、すぐに行きます!!!」
妙に明るく弾んだ声で電話を切った。
「急患?」
ではなさそうだが、一応聞いてみる。
ひとみは首を振ると、
「双子の出産、しかも自然分娩!なかなか見られない珍しいケースだから行って来るね!」
「へ!?あ、あぁ…」
戸惑う俺を尻目にひとみは急いで支度を済ませて、
「ごめんなさい…戸締りお願いね」
申し訳なさそうに言うと、俺の手にスペアキーを乗せ、唇にふわっと触れるようなキスをして、
「急がなきゃ!!!」
言い終わるよりも早くバタバタと部屋を飛び出して行った。
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