泣きたい夜には…~Shingo~



それから半月が経ち、仕事帰りにひとみを待っていると、


「成瀬さーん!」


両手いっぱいに花束を抱えた高山さんがこちらに向かってゆっくりと歩いて来る姿が見えた。


「来週から本社ですか?」


高山さんは頷いて、


「えぇ、退屈しない毎日になりそうだわ」


そう言うと、苦笑した。


「慎吾!ありさ先輩!」


ひとみが手を振りながら俺達のところに走ってきた。


「あれ?もしかして、成瀬さんとひとみちゃんて?」


驚く高山さんを尻目に、


「はい!そうなんです!」


俺の腕に自分の腕を絡めて元気に答えるひとみの言葉に恥ずかしいやらうれしいやら。


別れ際に高山さんは、


「ひとみちゃんもついにドクターか…決めたんだね、病院を継ぐこと…大変だけど頑張ってね。さぁ、私はこれから


都内までドライブだわ。じゃ、ふたりともお元気で!」


そう言うと、足早に駐車スペースへと向かった。



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