泣きたい夜には…~Shingo~



「はい、浅倉です」


真剣な眼差しがゾクゾクするくらいカッコいい。


「わかりました、10分で行きます!!」


ひとみは電話を切ると、ドクターモードが一転、申し訳なさそうな表情で、


「慎吾、ごめん!赤ちゃんが仮死状態で生まれてきたらしくて今蘇生しているんだけど、人手が足りないみたいだから行って来る。

2時間…ううん、1時間半で戻るから…待ってて」


支度をしながら早口で言うと、玄関先で見送る俺をハグして、あわただしく出て行った。


はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!


いいところだったのにぃぃぃぃ!!!


こういうことは今回に始まったことではない。


行為の真っ最中に呼び出されたことだってあった。


俺だって病院に出入りしているMRだ、医者の大変さはよくわかっている。


仕事だから仕方がないと十分理解しているつもり。


だけど…


「はぁ-っ…」



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