泣きたい夜には…~Shingo~



「あぁ、もう夕食の時間なんだ」


安堵の表情を見せるひとみ。


チッ、邪魔が入ったぜ。


どうしてこうもタイミングが悪いんだ。


心の中で毒づくも、


ギュルルル…


意に反し、俺のお腹は空腹であることを告げていた…。


部屋の中に料理が次々と運ばれてきた。


豪華な料理の数々。


こんなのテレビや雑誌でしか見たことがないぞ。


ひとみは慌てた様子で、


「あれ?宿泊プランと違う料理が来ているような気がするんだけど。こんなに豪華じゃないはずなのに…私、間違えちゃったのかな?」


やべぇ、予約する時、俺が色々とひとみにちょっかいかけたから間違えたのか?


ひとみは責められない。


俺の責任だ…。


羽の生えた1万円札が何十枚も飛んでいく光景が脳裏をよぎる。


「失礼します」


女将が入って来て正座をすると、深々と頭を下げた。


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