泣きたい夜には…~Shingo~
羽の生えた1万円札が何十枚も飛んでいく光景が脳裏をよぎる。
「失礼します」
女将が入って来て正座をすると、深々と頭を下げた。
「この度は私どもの大切なお客様を助けていただきましてありがとうございました。
おかげさまで、快方に向かわれているそうです。お客様方がいらっしゃらなかったら、当旅館の信頼を失うところでした。本当にありがとうございました。
心ばかりですが、当旅館最高級の料理をご用意させていただきました。是非ともご堪能ください」
もう一度頭を下げ、女将が出て行った後、俺とひとみは顔を見合わせて、
「「いいのかな?」」
思わずハモった。
「私がしたことなんて医師として当然のことなのに」
ひとみは困惑気味だったけれど、
「女将の感謝の気持ち、ありがたくいただいておこう」
と、いうわけで、
「「いっただっきまーす!」」
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