クローバー的恋事情
古くても愛着のあるアパートはもう7年も住んでいるらしい。取り壊されることになれば、仕方なく引っ越すだろうけど、自ら引っ越すことは考えていないと話す。


「結婚…したら、やっぱり引っ越しますよね?」


「それはそうだね。狭い部屋に家族では無理だからね」


「彼女はなんて…」


小島さんは高級マンションか一戸建てを望んでいるのかな?


「ん?なにも」


「なにもって…」


「葵ちゃんも聞いていたよね?結婚は考えてないって言ったでしょ?」


うん…

頷くことしか出来ない。


「藤沢さん…」


「お、起きたのか?まだ着かないぞ」


田辺くんがアイマスクを外す。


「いつの間に、葵ちゃんなんて呼んでいるんですか?親しくしないでくださいよ」


「は?いつから起きていたんだよ?盗み聞きか?」


「聞こえただけです。ぼろいアパートがどうとか言うのが」


聞かれても支障のない話だったはずだ。
< 149 / 248 >

この作品をシェア

pagetop