クローバー的恋事情
奥さんがお皿に盛ってきてくれた。チョコとフルーツの二種類でホイップクリームが添えられていた。


「わあ、美味しそう」


「クスッ。どうぞ、ゆっくり食べてくださいね。藤沢さんもどうぞ」


思わず出てしまった大きな声を笑われた。もっと大人らしい対応をしないといけないと思うのに、恥ずかしい。


「うん、相変わらず美味しいですね」


「とってもしっとりして美味しいです」


こんなに美味しいバウンドケーキは初めて食べた。人気があるのも頷ける。


「本当に美味しいですね。こちら以外は都内の2ヶ所でしか販売してないんですよね?デパ地下とかに出してもいいと思うのに、もったいないですね」


早々と食べ終えた田辺くんがマスターと奥さんに率直な意見を言う。


「それは俺も提案したことがあるんだよ。うちで全面的に協力するからどうですかと。でも、生産量に限界があるからと断られた。工場で作るという手もあるけど、そうすると手作りならではのこだわりが消えてしまうからね」

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