クローバー的恋事情
いつの間にか私たちの横に藤沢さんが来ていた。そして、私の前に座る。

「あ、ここに座ったら、せっかくの景色の邪魔になるよね？」


「いえ、大丈夫です」


藤沢さんのバックにきれいな青空が広がる。なんて、青空がよく似合って、爽やかなんだろう。

藤沢さんは、私に外が見えるように少し横にずれてくれた。やっぱり優しい。お弁当が喉に通らなくなる。こういうのをなんて、言うんだっけ？

恋煩い？こういう感覚が久しぶりでどう解釈していいか分からなくなる。


「隣、いいですか？」


藤沢さんの隣に同じ新入社員の男性が座った。名前は…覚えていないので、名札を見た。田辺…ああ、自己紹介で得意だという早口言葉を言ったおかしな人だ。


「萱森葵ちゃん」


「え、はい」


その田辺くんに呼ばれた。


「彼氏、いるの？」


「え？えっと…」


ここは、合コンの場ではない。会社の親睦の場だ。予想もしないことを聞かれ、答えに詰まった。

< 16 / 248 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop