クローバー的恋事情
私と藤沢さんは仲の良い先輩と後輩に見えるらしい。「萱森さんは藤沢くんのかわいい妹みたいだねー」と課長が言っていた。悪いことは言われてないけど、気持ちは複雑だ。


「おい」


「え、あ…なんですか?」


「おい」なんて偉そうに呼ぶ人はうちの課にはいない。課長だって、ちゃんと名前で呼ぶ。


「なんだよ、その顔」


「伊藤さん、なんの用ですか?」


伊藤さんはたまに用事を言い付けにくる。


「これ、去年のデータなんだけどさ、夏に確か展示会をやっているんだよ」


「はあ」


「聞いてるのか?で、この時のパンフレットとか会場案内図とかが販売課にあるはずだから、ちょっと貸して」


去年のことなんてまだ入社してないから分からないのに…分かる人に聞いたほうが早いと思う。何で私に聞くんだ?

仕事を増やすなんて、ただの嫌がらせとしか思えない。


「あとで、持ってきて。よろしく」


「はい?え…」


相変わらず勝手な人だ。そんな人でも、少し前に彼女が出来たらしい。それもあって、変な誘いはなくなったけど、変な用事は相変わらずだ。
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