クローバー的恋事情
「何、泊まるつもりなの?」


「はい。せっかくだから、観光とか買い物とかしたいなと思って…ダメですか?」


「いや、構わないけど。あ、時間になるな。行こう」


二人掛けのシートの窓際に私は座った。藤沢さんはもちろん隣だ。昨夜はしっかり寝たから今日は眠くない。着くまでの間、今度こそちゃんと本を読もう。

持ってきた文庫本を広げる。


「葵」


「はい」


「ホテルは予約してある?」


「いえ、実は取っていなくて、向こうで見つけられるかなと…厳しいでしょうか?」


思ったよりも軽井沢は広くて、 どの辺りに取ったらいいか分からなかったので、行き当たりばったりでいけるかなと思った。それに思い立ったのが一昨日で探している暇がなかった。だけど、甘かったかな?


「んー、週末だから、どうだろうね。探してみてやるよ」


藤沢さんはノートパソコンで、宿泊サイトを開いた。


「いいんですか?ありがとうございます」
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