クローバー的恋事情
他に空いている部屋がなかったのかと聞こうと思ったけど、さっき4部屋空いていたと言ってた。それじゃ…わざと?何で?


「気にしなくていいから」


いえいえ、気にしないわけがない。どういうつもりで同じ部屋にしたのかとても気になる。

付き合っていない男女が同じ部屋に泊まるなんて…危険だけど、藤沢さんだから嫌ではない。だって、好きな人だから。

期待してもいいの?女だって、もしもの展開を期待するのだ。

「葵…」


「え?わっ…近いですよ…」


読んでもいない文庫本を開いたままでボーッとしていた。だから、藤沢さんが至近距離に来ていたことに呼ばれるまで、気付かなかった。

藤沢さんが近付いて来るのに気付かないことが多いような。不意打ちで現れるのは、心臓に悪い。気配を消すのが得意なのかな。

文庫本を覗いてきて、更に近くなる。思わず逃げるように体を後ろに動かすが、狭い場所では限界がある。
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