クローバー的恋事情
「そうそう、いい感じ。そのまま、タクシーに乗るよ」


なぜかうまく出来てしまった病人役。


「お連れさま、大丈夫ですか?」


タクシーの運転手に心配されるほど名演技になった。タクシーの中で、指示されていなくても、藤沢さんの足を枕にして、寝転んだ。

名演技続行だ。

ホテルに着いてもおぼつかない足取りで歩く。


「車椅子をご用意いたしましょうか?」


名演技は良いけど、人を騙すのは良くない。さすがに気が引けたので、「大丈夫です」と断って、チェックインをする藤沢さんの横に立った。

カードキーを預かり、エレベーターに乗る。


「葵。大丈夫か?もう少しだからな」


「ん、早く横になりたい」


迷演技は部屋に入るまで続く。


「寝たら楽になるよ。クスッ」


寝たら楽になる?それは本当でしょうか?最後の笑いの意味は何ですか?



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