クローバー的恋事情
「へー、いい名前だね。妹は藤沢なんだよ。あ、俺も藤沢だけどね。藤沢幸紀（ふじさわこうき）といって、幸紀はこう書くんだ」


今度は自分の手のひらに幸紀と書いた。藤沢さんの書く字を見るために少し離れていた距離をまた近付けた。近付くとやっぱりまた胸が高鳴る。


「藤沢さん。お待たせしました。こちらへどうぞ」


奥の従業員室から出てきたと思われる男性が正面から現れて、声をかけてきた。


「ちょっと待ってください。これを買って来るので。あ、葵ちゃん。本当にこれ、いいの？」


「はい。いいです。どうぞ、どうぞ」


藤沢さんはクローバーのストラップを持って、会計に行く。


「あの、藤沢さんのお知り合いですか？彼女さんとか？」


「え？いえ、全然関係ないです。通りすがりの者ですから」


「あはは、通りすがり？うちのお客さんですよね？ゆっくり見ていってくださいね」


男性は頭を下げて、会計をしている藤沢さんの方へと行った。

< 4 / 248 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop