ヤンキーの隣
昼休み、いつもの友人二人に誘われ、昼食をとる。
今日は天気がいいので、中庭での昼食だ。
会話の中心は当然のように、本日周りを騒然とさせるほどの大怪我をおったまま登校してきた如月史也のことだ。
「てかあの怪我ガチでヤバイよね、なんで今日学校来てるの」
「ねー、恐いねー」
みんな思ってることは同じらしい。
「でもさ、思い出してみれば今までって喧嘩したっぽい日のあとって学校二・三日休んでなかったっけ?」
「あーたしかにそうだったかも。だから今まではあそこまでの大怪我見なかったのかな。でもじゃあなんで今回は学校に来てたわけ?」
「さぁ?」
「かっこつけたかったとか?」
「え、大怪我見せて?俺かっこいいだろ的な?」
「「あははははは!!」」
大いに会話が盛り上がっている。他人の不幸で。
そして、話の方向が友人一人の発言のせいでいらん方向へ向かった。
「あ、あれじゃん!葉月ちゃんに会いたかったからとか!」
「おいやめろ。」
「なにそれウケる!でも最近如月のやつ二宮二宮二宮二宮だよね」
「おいやめろ。」
二人の友人のヒートアップに待ったをかけるが全く無視して話を進める二人。これはいかんぞ
「てかさ、ホントになんで急に葉月ちゃんに絡み始めたのあいつ」
「ねー、全然タイプ違うのに。如月はどうみても厳ついチャラ男だけど、葉月ちゃんはザ、淡白美女って感じだし」
「淡白美女ってなに。」
「葉月ちゃんにピッタリでしょ?私達でこの前考えたの」
「葉月ちゃん可愛いけど、いつもしらっとしてて、あっさりしてて……クールビューティーとは違うし、って考えて淡白美女!!」
「ナイスネーミングでしょ!」
「…………。」
美女と言われたのはわりと嬉しい。
「てか、如月のやつ葉月ちゃんのこと、もしかして好きなんじゃない?」
「それはない。」
「えーなんでー?」
「やつの振る話に喧嘩売ってるだろってぐらい淡白にしか返してない私のこと好きだったら、奴はとんでもないドMだと思う。」
「あははは!たしかに!」
「いやでもあんだけ大怪我して学校来てるぐらいだしドMもあながち間違ってないかも」
「「あははははは!!」」
本日の昼食は大いに盛り上がった。他人の不幸で。
その後、ご飯をそれぞれ食べ終え、二人は部活のミーティングがあるらしく、解散する。
私も借りていた本を返してしまおうと、1度教室に戻ったのち、本を持って図書室に向かった。
わがミナ高の図書室は主に生徒らが多く使用する本館から渡り廊下で繋がった先の二号館に存在している。
二号館は本館と違って人気が全くといってない。外で騒ぐ生徒の声が遠出に聴こえてくるぐらいだ。
私は一人図書室に向かってその二号館を歩いた。
すると、どういうことでしょうか。
「……………。」
人気のない廊下にそのまま寝転がっている男がいる。
しかもよく見なくても金メッシュ……如月史也だ。
如月史也は寝ているのか、微動だにしない。
「……………。」
廊下のど真ん中で寝るとはどんな神経しているのだろうか。いくら不良でもそれはないだろう。
これは無視するのが最良の選択だと、瞬時に判断する。遠回りになってしまうが他の廊下を通ろう。
「………いや、」
ちょっと待てよ。これ寝てるんじゃなくて……
ある可能性を思い付き、私はそろりそろりと近付く。
顔面がハッキリ見える距離まで近付くと、すぐに如月史也が決して寝ているわけではないことに気付いた。
顔が青白い。
私は辺りを見渡す。もちろん誰もいないし、気配さえもない。
保健室も二号館なので、ここからならばそれほど距離はない。
「…………。」
とりあえず私は保健室に走りだし、人を呼びに行った。