ヤンキーの隣
side 如月史也
なんだか今日はずっとダルかった。
原因は明白だ。昨日の銀龍との乱闘で出来た怪我。
なにもこんぐらいの怪我始めてではない。頻繁というほどでもないが、今までにも何度かあった。
いつもは調子が改善するまでは、学校を休むからとくに問題なかった。
けど、今回はなんとなく、学校に来たかった。
行ったってサボってることが多い上に、別に出席日数なんてもんを気にしてるわけでもねえ
ただ、なんとなく。
けど、やっぱり無理はするもんじゃない。身体はダルいし動かねぇし、頭痛も増してきた。
ああこれはヤバい。保健室に行くしかねーや
そう思って、歩いた途中、俺の目の前は真っ白になった。
「先生、ありがとうございます。」
「いや二宮が運ぶってのは無理あったろ。男だし。二宮の瞬時の判断は正しい。」
「いや…」
声が聞こえる。聞き覚えのある声だ。
俺の視界はうっすら光る。
そしてやがてハッキリとした。
「二宮…、と高杉…」
「おい、高杉先生だろ」
なんとなく、ここが保健室だとすぐにわかった。
俺は二宮を見る。すると二宮はいつも通りの表情で口を開いた。
「廊下で倒れてたんです。」
「…そうか…。」
「先生を無視かよ」
高杉は一つ溜め息をつくと、「電話してくる」と言って俺達から離れた。
「じゃあ私も、」
「待て。」
「…………。」
やべえ思わず引き留めちまった。
二宮は少し驚いた顔で俺を見る。
「少し話を聞け。」
「は?」
「五分だけだ。」
いつもより少しだけ開かれた目で俺を見る。すると、了承してくれたのか端に寄せられていたイスを持ってきて座った。
話を聞いてくれるらしい。
やべえ何を話そう。
「…………。」
「…………。」
「昨日は銀龍に仲間が奇襲されたんだ。」
「…………。」
「待ち伏せされてたらしい。」
「…………。」
「べつに待ち伏せ自体はそんなに珍しいことじゃねえ。むしろよくあることだ。だが昨日は待ち伏せされた場所に問題がある。」
「…………。」
「昨日うちの奴等がいた場所は普段めったにいかねぇところだ。いつも通ってる店付近での待ち伏せだったらわかるが、俺らがめったに行かねえ場所での待ち伏せってことは、むこうがあらかじめそこに行くっつー情報を知っていたことになる。昨日行った場所は極秘で幹事の奴等知らねえ。つーことは……、」
「…………。」
「幹事に裏切り者がいる可能性がある……」
「…………。」
一言も口を開かない二宮を俺は見る。二宮は何を考えているかわからない顔で、俺から微妙に外れた場所を見つめていた。
side 如月史也 終わり