夢のような恋だった
ここまで思ったことをハッキリ言ってくる子は今まで私の周りにはいなかったから、琉依ちゃんの言動は読めなくてドキドキする。
困って口をつぐんでいたら、サイちゃんが割って入った。
「要はもっと甘えろよってことだよ」
「サイちゃん」
「うちからだって仕事も通えるだろ。帰ってこいよ」
でもそう言われても、やりかけの仕事はパソコンの中にある。それはやっぱり今のアパートじゃないと出来ない。
画材道具だって、持って行こうと思ったら大変だ。
作り上げてきた環境をすぐに変えることは出来ない。
たいして進歩がなかったかも知れないけど、私は私なりに必死に六年間を過ごしてきたんだから。
「大丈夫。……草太くんは合鍵は持ってないの。だから開けなければ入ってこれないし」
「でも心配だし」
「困ったら連絡するから」
本当にするつもりはないけど。
こう言っておかないとサイちゃんは諦めないだろう。
顔を見合わせているとサイちゃんの携帯電話がなる。
「あ、壱瑳だ」
呟いた途端に琉依ちゃんの肩が跳ねる。
「もしもし。おーお疲れ。うん、もうじき帰るよ」
サイちゃんが電話に夢中な内に、こっそり琉依ちゃんに忍び寄る。
「琉依ちゃんの方はどうなってるの?」
彼女は私を見て困ったような顔をした。