夢のような恋だった
拗ねるように告げた琉依ちゃんに、壱瑳くんは口元にだけ笑みを浮かべて告げた。
「……琉依らしい」
まるでろうそくに火が灯ったみたいにポワッと空気が暖かくなる。
壱瑳くんって独特の空気の持ち主だ。
琉依ちゃんとサイちゃんがその顔に見とれて、その後顔を見合わせて同時に話しだした。
「なんか珍しい顔見た」
「な、な、……あ、あの、そうだ! だから帰ってお兄ちゃんをとっちめなきゃいけないんだよ!」
真っ赤になった琉依ちゃんは、その思いつきを声高に語って壱瑳くんの背中を押す。
「というわけで帰る! またね、紗優ねえちゃん、彩治」
「おー。明日なー」
ふんわりとそれを受け入れたサイちゃんは、私に向き直るとポンと背中を押した。
「俺はねーちゃん送ってく。……じっくり話も聞きたいし」
「サイちゃん」
でもサイちゃんに話すなんて、と戸惑いつつ彼を見上げる。
背が高くなった。
ずっと私を見上げて後をついてきていたサイちゃんは、いつの間にかこんなに大きく頼もしくなっていたんだ。