夢のような恋だった
「ありがとう、サイちゃん。いいこと思いついた」
「いいことって?」
「それは内緒」
そう言ったら、サイちゃんは困ったように笑ってみせた。
「ねーちゃんはいつも内緒だなぁ。本当に困ったら言ってよ。俺だって男だし。ねーちゃん一人くらい守れる」
「……ありがと」
悪気はないつもりなのに、私は良く話す相手にこんな顔をさせている気がする。
心配かけたくないだけなのだけど、それが却ってダメなのかしら。
アパートの前まで送ってもらって、中に誘ったけど、「遅くなるから帰るよ」とサイちゃんは首を振った。
「ちゃんとチェーンとかもつけろよ。ねーちゃんはボケっとしてるんだから」
「そんなことないもん」
「……いつでも家に帰ってこればいいのに。とーちゃんもかーちゃんもねーちゃんの話ばっかりする」
あの家で私はとても大事にされた。
でもそれは、昔のことが少なからず尾を引いているからだと思う。
パパが死んでから、ママは私の面倒を見る暇もないくらい忙しかった。
私にとても気を使わせた、とお母さんは今も時々後悔しているようにつぶやく。
お父さんはそんな私を、可哀相だと思っていたのだという。
同情から始まった関係だからか、お父さんはいつまでたっても私を庇護しようとばかりする。