夢のような恋だった


「ここなんですが。王子の方、もう一セリフいれませんか」

「追加ですか?」


月明かりの下、お姫様と変身が解けた王子様が再び出会って愛を誓うシーン。


『僕を見つけれくれてありがとう』

『あなたに会えて嬉しかった』

言葉をかわして二人は見つめ合う。


「ちょっとインパクト弱いかなって。もう少し具体的に先のことを語ってもいいかなぁって思うんですよね」

「そうですか? でも子供向けなのであんまり具体的にしてもって思うんですけど」

「子供だからこそ、ゴールに結婚とかを据えてもいいのかな、と。何か思いつきません? 言ってみてください」

「そうですねぇ。『永遠に一緒だよ』、『これからはずっと一緒に暮らしましょう』とか」

「あ、最後のいいじゃないですか」

「そうですか?」


人間が口にだす言葉に、永遠を信じるの?

心の中で叫び声が上がる。
草太くんの浮気は、結構私の心に傷をつけたらしい。

心が病んでいる時に、希望に満ちたものなんて書けない。
せっかくのお仕事なのに、自分の満足するようなものが作れないなんて。


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