夢のような恋だった
根本的に伝わっていないんだ。
悪いところを直したらとかそういうのじゃなくて、もっと根本の深いところで、草太くんじゃダメなんだって分かってしまったってこと、どう言えば伝わるんだろう。
……それも違うか。
草太くんだからダメなんじゃなくて、智くんじゃないからダメなんだ。
「……草太くんは私の何処が良かったの」
草太くんはモテる。
浮気するぐらいだから、次の人だってすぐに見つかるだろう。
別に、私にこだわる必要なんてないはずだ。
彼は一瞬驚いた顔をして考えこむと、ボソリといった。
「可愛かったし、いつも笑ってて気を使える子なんだなって思ってた」
気を使える、と言うか気を使うことが当たり前になっていただけだ。
人に嫌われるのが怖いから、ずっと顔色を伺っている、子供の頃からの癖。
それを詰ってくれたのは、今までで智くんだけだった。
「茂がスゲー気に入っていて焦ってもいたかな。慌てて告白したから紗優は驚いたかも知れないけど、付き合ってからも好きなところが増えたよ。あんまり干渉しあわないのも良かったし、かと言っていけばなんだかんだと相手してくれたし」
「でもそれって、別に私じゃなくてもいいよね?」
「紗優じゃなきゃダメなんだよ」
「何処が? 今のを聞いていると都合のいい時だけ相手してくれる人間が良かったんでしょう? 草太くんが私にこだわっているのは、茂くんが私にこだわっていたからってだけだよ」
草太くんから表情が落ちる。
あ、いけない。
そう思った時には遅かった。