夢のような恋だった
数分無言で歩いた後、頭上からつぶやきのような声が落ちてきた。
「……変更」
「え?」
「変更のシナリオが届いたんだ。あれ、なんで変えたの」
「……読んだの?」
「うん。でもまだ途中だから変えた意味が分からなかった」
もしかして、プロットの方は智くんのところに行っていなのかな。
シナリオだけなら、序盤で女の子が出た意味さえわからないかもしれない。
「あの、迷惑かけてごめんね。でもどうしても書きたかったの。今頑張って続き書いてるから、最後まで読んで欲しい」
「仕事だからもちろん読むけど。……だた、俺にはあれが」
智くんが立ち止まる。
まっすぐに私を見つめて、眉を寄せる。
あの時と一緒、傷ついた顔だ。
「主人公が、女の子から【キラ】をもらうじゃん。あれってどういう意味なの?」
「えっと、それは」
「六年前、紗……君は俺に【キラ】……【希望】を与えたつもりだったの?」
名前、呼んでくれない。
『君』なんていい方、初めてされた。
「あの時、新見や颯は、君が俺の将来を考えてそう言ったんだって何度も言ったけど。俺にとって、あれは【絶望】だった」
智くんの言葉は刃のように私の胸に傷をつけていく。