夢のような恋だった

数分無言で歩いた後、頭上からつぶやきのような声が落ちてきた。


「……変更」

「え?」

「変更のシナリオが届いたんだ。あれ、なんで変えたの」

「……読んだの?」

「うん。でもまだ途中だから変えた意味が分からなかった」


もしかして、プロットの方は智くんのところに行っていなのかな。
シナリオだけなら、序盤で女の子が出た意味さえわからないかもしれない。


「あの、迷惑かけてごめんね。でもどうしても書きたかったの。今頑張って続き書いてるから、最後まで読んで欲しい」

「仕事だからもちろん読むけど。……だた、俺にはあれが」


智くんが立ち止まる。

まっすぐに私を見つめて、眉を寄せる。
あの時と一緒、傷ついた顔だ。


「主人公が、女の子から【キラ】をもらうじゃん。あれってどういう意味なの?」

「えっと、それは」

「六年前、紗……君は俺に【キラ】……【希望】を与えたつもりだったの?」


名前、呼んでくれない。
『君』なんていい方、初めてされた。


「あの時、新見や颯は、君が俺の将来を考えてそう言ったんだって何度も言ったけど。俺にとって、あれは【絶望】だった」


智くんの言葉は刃のように私の胸に傷をつけていく。

< 128 / 306 >

この作品をシェア

pagetop