夢のような恋だった
「……この間の彼氏は、あの時の男なの?」
先に口を開いたのは智くんだ。
あの時、とは私が別れる為の口実にした嘘の彼のことを言っているのだろう。
「違う。……本当は、他に好きな人なんてできてないの。私、智くんに嘘ついたんだよ」
「え?」
「私、智くんに自分の進路を大事にして欲しかっただけなの。でも、どうしても上手く行かなかったから、嘘ついたの」
「……なんだよ、それ」
「ごめんなさい。智くんの気持ち無視して、私の気持ちだけ押し付けた。……でも信じて。私、智くんが好きだったの。他の人なんかいなかった。好きだから夢に向かっていって欲しかったの」
「俺は人生終わったと思った。あの時」
「ごめんなさい」
私もそうだよ。
あの日、世界は真っ暗になった。
それでも、智くんはいつかきっと夢をかなえるって、そう思うことが光になった。
「また会えて嬉しかった。でも、智くんに他人行儀にされて死ぬほど悲しかった」
それこそ、人生終わりだと思えるような。
智くんはくすりと笑って呟く。
「この間は俺が傷つけたんだ。……お互い様ってことか」
「うん」