夢のような恋だった
「……紗優の夢だったろ。絵本かくのは」
「うん」
「いつか必ず叶えるはずだって思ってた」
地面を見つめたまま、当たり前のように告げる彼に、目頭が熱くなってくる。
私、今日は涙腺が緩すぎるよ。
智くんの言動一つ一つに、悲しかったり嬉しかったり、心のなかが忙しい。
「だから、たまに本屋で見てたの。以上! 飯でも食おうぜ、ハラ減ったよ」
「うん」
照れ隠しなのか妙に明るい声でそう言い、勢い良く立ち上がる。
先に行ってしまう彼の背中を私は小走りで追いかけた。
そっと手を伸ばしてもう一度服の裾を掴もうとして、歩幅の広い彼になかなか追いつけずに手を戻す。
暗闇に浮かぶ彼の背中に問いかける。
ねぇ、智くん。
私とあなたの距離は、どのくらいまで戻ったの?