夢のような恋だった
シナリオ、シナリオ。
どうしようかな。せっかく音と仕掛けが楽しめるなら、不思議が一杯の物語がいい。
対象年令は幼稚園に通う頃から小学校低学年くらいって言ってた。
その年頃ならきっと世界は不思議で満ちている。
道端の草も、普段立ち寄らない古びたお店も、本がいっぱいの図書館も、みんな冒険の入口になるだろう。
小さな時の弟を思い出す。
元気で、なんにでも興味を示していたっけ。
八歳も離れていたから、いつの間にかサイちゃんの面倒を見るのは私の仕事になっていた。
絵本作家になりたいというのは昔からの夢だったけれど、実際になれたのはサイちゃんのお陰もあるんだと思う。
大人になるに連れ自然に忘れていく子供の考えを、いつも私に思い出させてくれた。
絵本作家として必要な子供の目線を、私が今も持っていられるのはサイちゃんとの日々があったからだ。
そうだな。
主人公は絵が上手な男の子。
図書館で読んでいた本の中に吸い込まれてしまうんだ。
彼が入った世界は紙のなか。
だから、絵に書けばそれはその世界の中でなら動くということ。
彼はその世界では万能の創造者になれる。